ビタミンDを新しいくすりにする取組み

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横 山 啓 太 郎
(東京慈恵会医科大学 腎臓・高血圧内科)


今日2011年3月18日は、東日本大震災から漸く1週間目である。被災地からの血液透析患者さんの受け入れで私たちの病院も混乱している。何時間もかけて東京に来られた患者さんの逞しさを感じ、その治療にたずさわれることに臨床医としての喜びを感じる。また、被災患者さんのために私より遥かに多くの仕事を供給しておられる先生方に敬意を表す。被災患者さん達が大事にくすりを握りしめて来院されたことは、くすりというものが如何に患者さんに大切なものかが解かる。
ビタミンDは薬なのか?それともサプリメントなのか?透析医にとってビタミンDは薬で、若い女性や欧米人にとってはサプリメントかもしれない。
新しいくすりは「想定される効果」を治験によって実証されることによって上市される。
この立証が現在のEBM研究の基盤になっている。「想定される効果」の中で最もシンプルで重要視されているのが「生命予後改善」であろう。このスキームは疾患概念を変えてしまう可能性を有している。腎性骨症はCKD/MBDという生命予後を重視した疾患概念に変貌している。
また逆に「生命予後改善」が医学の最優先事項と捉えられるようになると「ある治療が生命予後を改善されるかもしれない」というヒストリカルコフォート研究が数多くなされるようになってきた。「血液透析患者に活性型ビタミンDが有効である。」という研究は、このタイプの代表的なものである。活性型ビタミンDが結核、I型糖尿病、アレルギー疾患あるいはある種の悪性腫瘍に有効であるといういくつかの研究もある。当たり前であるが血液透析患者の血液中の活性型ビタミンDレベルは低値をとる。多くの傍証があることで「血液透析患者に活性型ビタミンDが有効である。」ことを信じている研究者も多い。
しかし、「血液透析患者の生命予後改善に活性型ビタミンDが有効である。」という仮説は、実は「想定される効果」を前向きに立証するという段階を十分踏んでいない。くすりがその効果を世に認知されるハードルを越えていない。
私が、このJ-DAVID研究に協力したいと思った理由は、「想定される効果」を前向き研究で立証するというスタイルをとっているからに他ならない。「血液透析患者に活性型ビタミンDが有効である。」という想像力と独創性に富んだヒストリカルコフォート研究を行った庄司先生、西澤先生がJ-DAVID研究を企画されたことは賛辞に堪えない。J-DAVID研究で「血液透析患者に活性型ビタミンDが有効である。」ことが示されて初めて「活性型ビタミンDはサプリメントから新しいくすりになる。