ビタミンD、副甲状腺と私

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矢 野 彰 三
(島根大学医学部 内科学第一)


今から14年前、大学院生だった私は当時神戸大学の杉本利嗣先生(現島根大学教授)のもとで研究を始めた。私が透析医療に進みたいと希望したため、腎不全 による二次性副甲状腺機能亢進症(SHPT)におけるCalcium-sensing receptor (CaSR)の役割について、というテーマを与えていただいた。ほどなくビタミンDとvitamin D receptor (VDR)がSHPTの発症・進展に重要な役割を果たしていることを知った。中でも深川雅史先生(現東海大学教授)らが報告したVDRの減少が副甲状腺の 増殖を促進するというストーリーは非常に説得力があった。なぜ摘出した副甲状腺の各腺の大きさがこんなにも違うのか、という疑問にちゃんと答えてくれてい るではないか。単に活性型ビタミンD濃度の低下によって副甲状腺腫大をきたすのならば、腺の大きさは同じ程度のはずである。どうやらSHPTが進展すると 各腺に結節が生じ、それぞれ多様な細胞集団であるがために各結節の増大速度も違うのだと考えられた。これはVDRだけでなくCaSRの減少も関与していそ うだということで、私は無事大学院を卒業できたのだった。
PTXによって摘出された透析患者さんの副甲状腺標本を何枚も見ながら、その多様さ、 不思議さに新鮮な驚きを感じたことは今でも忘れられない。大小多数の結節が散在し、線維性被膜で囲まれた組織像。医療の進歩はすばらしく、現在はエコーで 多数の結節がはっきりと見えることもある。原発性副甲状腺機能亢進症や腎不全モデル動物では見られないようだが、なぜヒトのSHPTがこのような組織像を 呈するのかは未だ謎である。時は流れ、VDRとCaSRは車の両輪のごとくSHPTの進展に関与することが多くの研究者によって明らかとなってきた。 CaSR作動薬シナカルセトや高濃度のビタミンD(誘導体)は副甲状腺のVDRおよびCaSRの発現を増加し、それぞれの作用を増強することによって、副 甲状腺の増殖を抑えかつ細胞死を惹起するという。両者は今やSHPTの治療・管理に欠かせない薬剤であり、研究に携わった者としては感慨深いものがある。
生体でのビタミンDの役割は非常に幅広く、特にVDRの重要性は加藤茂明先生(現東京大学教授)らの作出したノックアウトマウスの成果から世界に知られる こととなった。ビタミンDはAを除く他のビタミンと性質を異にしている。活性型となった1α,25(OH)2D3は核内受容体であるVDRに作用する、生 体にとって重要な「ホルモン」なのである。「J-DAVID試験」によって再認識される日を待ちたい。