腎・透析疾患領域の日本発のエビデンスの創出を

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山 縣 邦 弘
(筑波大学大学院人間総合科学研究科腎臓病態医学)


  腎不全患者では腎での1α hydroxylaseの活性が失われ、活性型ビタミンD不足になる。このため、腎不全患者では、ビタミンD不足を予防するため、活性型ビタミンDの投与 を行うことは至極当然のことと思われる。しかしながら、実臨床においては、保存期慢性腎不全患者に活性型ビタミンDを投与すると腎機能は悪化する、腎機能 悪化を抑制するなど、相反する知見が存在している。透析患者においても、一律の活性型ビタミンDの投与は低回転骨の発症を促し、高カルシウム、高リン血 症、異所性石灰沈着を招くなどの指摘があり、活性型ビタミンDが足りないから補充という単純な話しでは全く済まされない。そもそもビタミンDには多様な作 用の存在が知られており、副甲状腺を介したカルシウム・骨への効果と同時に、免疫調節、炎症調節への作用、さらにレニンやインスリンの遺伝子発現への作用 があることが明らかになっている。
このような中で、維持透析患者にビタミンD製剤を投与した方がいいのかどうか、その答えを出すのがこのJ- DAVID試験である。この研究では観察研究で明らかとなった、1α(OH)D3投与の透析患者における心臓血管病発症抑制効果、ひいては長寿をもたらす 効果の有無を、PROBE法による前向き研究デザインで見るものである。J-DAVID試験の結果により、透析患者の基本的処方として活性型ビタミンDを 投与すべきかどうかの答えが導きだされるはずである。
現在、私どもは慢性腎臓病重症化予防のための戦略研究(http://fromj.jp/) を全国49地区医師会の先生方、日本栄養士会の協力のもと、実施させていただいている。こちらは腎機能正常から保存期慢性腎不全までのCKD患者全般を対 象とし、各医師会をクラスターとするクラスターランダム化前向き比較試験で、CKD診療ガイドの診療目標に近づけるエビデンス実践ギャップの解消の腎機能 悪化スピードに対する効果が明らかになるはずである。
FROM-J, J-DAVID試験、さらには日本腎臓学会が中心となって実施しているJKDRなどのコホート研究を含め、日本発の洗練された研究デザインの腎領域の前向 き研究・臨床研究により、客観的で、日常診療に役立つエビデンスを創出することが強く求められている。何より我が国は維持透析患者数が世界第2位の透析大 国であり、医療体制、社会背景ともJ-DAVID試験のような透析患者の実践的、臨床的なエビデンスを創出するにはうってつけのはずだ。J-DAVID試 験の成功を切に祈るものである。