副甲状腺過形成とビタミンD

tominaga_yoshihiro_l

冨 永 芳 博
(名古屋第二赤十字病院 移植・内分泌外科)


二次性副甲状腺機能亢進症(SHPT)に対するわれわれの副甲状腺摘出術(PTx)症例数は近日中に2800例に到達する。毎日の様に腫大した副甲状腺を 見ていると、どの様な機序で副甲状腺が腫大してくるのかに当然興味をそそられる。SHPTの発症病因は突き詰めると(1)低カルシウム血症 (2)リンの 蓄積 (3)活性型ビタミンDの欠乏に集約される。それぞれのfactorが独立して、更に複雑に絡み合って副甲状腺の増殖を促している。
活性 型ビタミンDの欠乏は副甲状腺過形成の一因であることは明白である。ビタミンDの作用を遮断したビタミンD受容体(VDR)ノックアウトマウスで、副甲状 腺が腫大することがそれを証明している。VDR ノックアウトマウスに高カルシウム食を与えた時に、上昇したPTHが抑制される程度と副甲状腺過形成の縮 小とには乖離がみられることが、カルシウムとは独立にビタミンDが副甲状腺の増殖を制御することを示している。臨床の場で活性型ビタミンDおよびその誘導 体 (VDR activator)がSHPTの進展を抑制していることは明らかである。しかしながら、限界があるのも明らかである。われわれは、OCT投与前に頚部超 音波検査(US)で副甲状腺のサイズを測定し、その後OCTを投与し、OCTに反応してPTHが低下する群(responder)とPTHの低下が十分で ない群(non-responder)を比較をすると、OCT使用前の最大副甲状腺の大きさ(推定体積)が最も重大な両者を分ける要因であることを示し た。それに遡る10年以上前に、結節性過形成ではびまん性過形成に比して有意にVDRの発現が低下していることを明らかにし、結節性過形成まで進行すると ビタミンDの反応性が低下することを推測したが、まさにわれわれの臨床研究はこの仮説を裏付けるものである。この仮説に則れば、早期から十分なVDR  activatorを投与することはびまん性過形成より結節性過形成への進行を阻止する上で有効と考えられる。更にVDR activatorがVDRの 発現を制御しているとなればなお更である。
さてcinacalcetの登場はSHPTの治療に大きな影響を及ぼしつつあるが、 cinacalcetがCalcium sensing receptor(CaSR)を介することを鑑みると、VDRに作用するVDR activatorの併用は意義あるものであろう。果たして長期的に見て、cinacalcetは結節性過形成をcontrolできるのか?私にとって興 味深いテーマである。
もう一つの興味はadynamic bone diseaseである。過度なPTH抑制は果たして骨回転を抑制し、異所性 石灰化を誘導し、生命予後を悪化させるのか?PTx後の患者さんを診察しながら日々自問している。J-DAVIDの研究がこの問題を解くヒントを与えてく れることを期待している。