医学臨床研究について思うこと

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大竹 剛靖
(湘南鎌倉総合病院 腎臓病総合医療センター)


 私が研修医として腎臓病診療を学び始めた頃には、報告されている論文や症例報告を参考にして、オーベンの先生方にお伺いしながら、1つ1つ経験値を上げて診療を行ってきました。医師になった際には「有学」を心において、細かく患者を診療するように努めてきましたが、細かく診れば診るほど疾患の程度や合併症が1人1人違うので、1人として同じ症例はなく、とまどうことばかりでした。ですから、今でもそうですが、患者から身をもって教わることがとても多くあります。ただし、独りよがりの治療にならないように、体系だった治療のよりどころとなるしっかりした根拠を自分に対するエクスキューズとして求めてきたように思います。
 人の体を自然科学で解明し、すべてを理解しようとしても到底できることではありません。将来にわたり、多くの時代を経ても人体の精緻なしくみをすべて解明することはできないのではないかと思います。医学にはわからないことだらけです。しかし、科学的手法を用いて1つ1つを明らかにして行く事で、確実に医学は進歩しています。科学的な事実の検証で積み重ねられてきた医学と、目の前の患者への医療の2つを上手に両立させながら、これからも進んで行きたく思います。
 基礎医学的な検討が必要な事はいうまでもありませんが、臨床医としては臨床研究がもっとも大切であると思っています。その臨床研究とは、研究のための研究でなく、意外性や新規性ばかりを追うのではなくて、現場の患者さんたちに直結した、何がいま問題なのか、何を患者は困っているのか、という視点から行われる事が一番大事だと思います。私の病院の後輩医師たちにも、常にこの視点を持って患者診療にあたるように指導しています。透析患者さんの生命予後は種々の治療を行っても未だ満足のいく十分な成果は出ていません。透析現場から発信されるJ-DAVIDの成果に大いに期待しております。