肝油ドロップの思い出

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成瀬 友彦
(春日井市民病院)


 先日当院の若手の先生が、夏休みをとりたいが良いでしょうか?と相談に来た。“もちろんOKだが、どこに行くの?”と聞いたところ“宇宙です。”と!冗談かと思ったらこれが本当で、なんでもロシアに行き2人乗りミグ戦闘機で大気圏まで行くというツアーに応募したそうで、ウン百万かかるとのこと。まだまだ若いつもりでいたが時代は変わったもんだなぁ、と実感させられました。もし自分に“夏休みの思い出は?”と聞かれても最近は大した出来事も無く、思い出の大半は子供時代にさかのぼります。その思い出されることの一つが、“肝油ドロップ”です。保育園に通っていた頃、普段は先生から一日一粒ずつしかもらえない肝油ドロップが、夏休みには日数分いっぺんにもらえるのです。この肝油ドロップ、食べた方はわかると思うのですが意外とおいしく、保育園の先生から“一日一粒ずつ食べなさい”と言われていても、大抵夏休み最初の2,3日で全部食べてしまったものです。この肝油ドロップ、中身はビタミンA,ビタミンDなどが含まれており、元々は戦後の栄養失調の子供から“鳥目”や“クル病”を防ぐために提供されていたとのこと。昭和40年代前半に幼少期を過ごした我々が肝油ドロップを知る最後の世代かもしれませんが、今思えばビタミンDの内服ミニミニパルス療法を自ら実施していたのかもしれませんね。時は流れ平成の時代になり栄養失調は遠い過去の話になりましたが、いまだに透析回診で大量の薬に閉口する患者さんでさえも“ビタミンDを処方します”というと抵抗なく受け入れてくれます。“ビタミン”という響きには不思議な力があるのでしょうね。現在進行中のJ-DAVID試験でもビタミンDの素晴らしい効果が証明されるであろうことを信じています。(・・・ちなみに宇宙飛行士の骨粗鬆症予防にはビタミンDではなくビスフォスフォネートが使われているようです。)