ROD、CKD-MBDの研究分野の凄まじい進展から目が離せない

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鈴 木 正 司
(信楽園病院腎臓内科)


1943年に2人の中国人LiuとChuによって提唱されたROD(Renal Osteodystrophy)の用語は、60年後になってCKD-MBD(Chronic Kidney Disease-Mineral and Bone Disorder )へと進化し、それが含む概念は大きな変化を遂げた。世間ではこの様な概念の変化をパラダイム・シフト(paradigm shift)と呼ぶ。この様なパラダイム・シフトが起こる現場に居合わせること自体を、わが身の幸運と捉えるべきなのであろう。腎臓病とミネラル代謝の研究分野で起こったこの様なパラダイム・シフトの背景には、この分野でのブレイクスルーとも呼ばれる重要で新たな発見や知見が相次いだことを指摘しなければなるまい。
それには1970年の活性型ビタミンD(VD)の発見・構造の決定と、腎臓の役割の解明を挙げねばなるまい。この研究での米国(DeLucaグループ)と英国(Kodiceckグループ)による激しい先陣争いの様子は、当事者であった須田立男先生から直にお聞きし、その感動は今になっても私の頭に鮮やかによみがえってくる。
活性型VDの発見に次いで、腎不全での副甲状腺細胞でのVD受容体の減少が明らかとなり、その後にCa感受性受容体(CaSR)が発見されると、腎不全では同様に減少していることが判明し、腎不全でのPTH分泌抑制の困難さがさらに浮彫となってきた。これらの病態に対しての新しい構造のVDの合成、さらにはCaSRを刺激する化合物の開発などが驚異的な速度で進められて、すでに臨床の現場で使用されて、それなりの効果を上げている。
しかし未だに苦労しているのがリン(P)のコントロールであろう。アルミニウム(Al)がPのキレート薬として期待通りの効果を上げていたものの、Alの体内蓄積という致命的毒性効果が判明して我が国では使用が禁止され、全世界的にも炭酸Ca(あるいは酢酸Ca)の使用に移行した。これはCa負荷を増やす側面は当初から危惧されたが、果たして血管などの軟部組織での不都合な石灰化が大きな問題となった。そこで登場したのが陰イオン交換樹脂であるセベラマーであったが、量が多く服用しにくいこと、高度の便秘や腸管内の通過障害から致命的な腸穿孔へ発展する例も散見され、結局は炭酸Caとの併用が現実的である。
この様な状況下で炭酸ランタン(La)が登場した。希土類元素であるLaは、当初はAlの蓄積による毒性効果と重ね合わせて論じられることが多かったが、Alと異なりLaは胆汁排泄が主体であるが、骨への蓄積は皆無ではない。骨への微量な蓄積はAlの如く特異的に石灰化前線に沈着する様子とは異なり、部位を特定できるような蓄積形態をとらないようである。とすればLaはストロンチウム(Sr)と同様な考え方が成り立つかも知れない。SrはCaと同様にアルカリ土類金属に属し、地球表層では16番目に多い元素である。しかも花火の赤色材料でも使用されている如く、割合に身近な元素でもある。実は我々は毎日2mg程度のSrを経口摂取しており、骨組織を中心に全身的に300mg程度のSrを保有している。しかしSrが我々の身体では必須成分であるとの証拠はなく、Srの欠乏症も、Sr蓄積の有害性も知られていない。とは言うものの、炭酸Laの使用では長期に亘った観察を継続すべきことは当然であろう。
Pの話題のついでにもうひとつのブレイクスルーを取り上げるならば、それはFGF-23とKlothoの発見であろう。骨細胞から分泌されるFGF-23が尿細管でKlothoと共同してP利尿を行うという新事実は驚きである。そしてKlotho欠乏動物が老化促進状態で早期に死亡するという事実から、Pのコントロールこそが長寿の鍵であることを示唆するものとして、今後の研究の進展を見守りたい