PTH, ビタミンD研究に魅せられて

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杉 本 利 嗣
(島根大学医学部内科学講座内科学第一)


私は内分泌代謝内科学の立場から、カルシウム・骨代謝領域の研究を進めてきており、研究対象の中心となるホルモンはPTHと活性型ビタミンDであります。実際、私の研究の第一歩は新たに確立したラット単離骨還流系を用いて、PTHの骨に対する作用発現におけるビタミンDの重要性を示したことです。そして腎領域との関わりは、私の恩師である藤田拓男名誉教授(当時神戸大学医学部第三内科教授)のご推薦を受け、米国ワシントン大学(セントルイス)renal divisionへの留学がきっかけでした。当時このdivisionのボスであるEduardo Slatopolsky教授は、透析患者の二次性副甲状腺機能亢進症に対する静注ビタミンDパルス療法の有効性を示し、この領域の治療に新たな局面を切り開く成果であると注目されていました。さらにこの臨床結果は活性型ビタミンDがCaを介さない直接のPTH分泌抑制作用を有する可能性を強く示唆するものでした。そこで私に与えられたテーマは活性型ビタミンDなどによるPTH分泌調節とその機序であり、ウシ副甲状腺細胞培養系を確立し、活性型ビタミンDのPTH分泌抑制作用を示すとともにその機序に関する研究などをさせていただきました。帰国後も透析医療を専門とする矢野彰三先生らとともに原発性そして腎不全に伴う二次性副甲状腺機能亢進症における副甲状腺細胞増殖、PTH分泌とビタミンD受容体、カルシウム感知受容体発現、そしてこれらの遺伝子多型との関係などについて研究し、腎不全、ビタミンD、PTHは常に興味がそそられる領域であります。その後も私自身の臨床と研究の軸足は内分泌代謝、骨代謝にあるため、腎臓、透析領域は専門とはいえませんが、骨、副甲状腺とともに腎臓は一番気になる臓器です。
近年ビタミンDの多面的作用が注目され、また臓器連関の観点からもビタミンDは非常に魅力的なホルモンであると痛感しています。今回のJ-DAVID試験により、活性型ビタミンDの心血管イベント発症抑制効果、さらには長寿をもたらす効果、すなわち健康長寿ホルモンであることが立証されることを切に願っています。