エビデンス作りに役立つRCTと観察コホート

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J-DAVID研究会事務局
大阪市立大学大学院医学研究科
老年血管病態学
庄 司 哲 雄


診療ガイドラインはエビデンスに基づいたものであるべきだといわれます。最も高いエビデンスはランダム化比較試験(RCT)やそのメタ解析に与えられ、観察研究は一段低く位置づけられます。しかし、あらゆる疑問に対してRCTが揃っている訳ではありません。そこで、必要なエビデンスを作るために、大変な努力でRCTが実施されています。また、観察研究、とくに大規模なコホート研究の結果も「穴埋め」に活用されています。
J-DAVIDはどのようなエビデンスを生み、診療ガイドラインにどのような影響があるのでしょうか。血液透析患者における活性型ビタミンD治療の意義を明らかにする試験ということは間違いありませんが、選択基準に「intact PTH≦180 pg/mL」があるため、PTHが高くない血液透析患者に活性型ビタミンDを投与することの意義を調べるRCTということになります。もし、活性型ビタミンD投与に何らかのデメリットが認められれば、CKD-MBD診療ガイドライン2012の妥当性を示すエビデンスになります。逆に、活性型ビタミンD投与に何らかのメリットが認められれば、ガイドラインの一部に修正を求めるエビデンスになります。
しかし、RCTの結果解釈は必ずしも単純ではありません。例えば、スタチンを用いた4年のRCTでは有意なCVDリスク低下は示されませんでした。だからといって、これを「脂質異常は放置すべきである」と受け止めるのは、少し短絡的なように思うのです。というのは、ある治療(あるいは危険因子)に対する暴露期間は、RCTでは観察期間の数年に限定されますが、観察コホート研究では、観察開始以前の人生も相当加わることになります。透析患者において、観察コホートでは脂質異常は心筋梗塞の独立した予測因子と示されますので、もっと長期の試験では有意な結果が出たかもしれないのです。
別の例として、糖尿病の血糖管理で合併症の発症抑制が可能かどうかをみたRCTでDCCTというのがあります。10年間のRCTでも心筋梗塞の予防効果は有意ではありませんでした。しかし、RCTを終えた患者さんたちを、任意の治療に戻して追跡した観察コホート(EDIC)をみると、EDICに入ってから元強化治療群の心筋梗塞リスクが有意に低下することが確認され、「Metabolic Memory」「遺産効果」と呼ばれ注目されました。DCCT-EDICは「治療がCVD抑制効果を示すのに長期間かかることがある」ことを示していると私は思うのです。
J-DAVID試験で最初に登録された症例は、もうすぐ4年の観察を終了されます。その後は、割付治療のしばりを解除して、通常診療下で、観察コホートとして追跡していただけないかと考えております。「J-DAVIDコホート」とも呼ぶべきプロジェクトについて、世話人・幹事会でもご意見をいただき、現在検討中であります。