J-DAVID試験、結果発表 ― マドリードと横浜で「驚きの声」

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J-DAVID研究会事務局
大阪市立大学大学院医学研究科
血管病態制御学
庄 司 哲 雄


 「活性型ビタミンD製剤を使用中の透析患者は、使用していない患者に比較して、総死亡リスク・心血管死亡リスクが低い」――― 数多くのコホート研究が報告した事実です。『ビタミンDが「長寿ホルモン」って本当?』という疑問に答えるべく実施されたJ-DAVID試験。2007年6月の第1回プロトコール検討委員会から数えてちょうど10年、2017年6月に結果発表できました。
 6月4日、IFEMA Feria de Madridはからっと暑く、第54回ERA-EDTAの多くの参加者であふれていました。Late-breaking clinical trials(LBCT)のシンポジストとして発表できることになり、9:30からはプレスに対するブリーフィングで記者からの質問を受けました。11:45~13:15は発表本番。会場のHall 10は巨大なスクリーンが横に3面並ぶ最大の部屋。2003年ベルリンでのWCNでシンポジウム発表した時のことを思い出しました。LBCTの持ち時間は質疑込で18分。当日早朝までスライド枚数を調整しましたが、いくら頑張っても28枚より減らせません。セッション30分前、同行してくれたデータセンターの藤井比佐子さんを相手に、PCを見ながらひとり言のように予行演習をし、「なんとかなる」と腹を決めました。
 今回のLBCTの5つの発表のうち4つはRCTで1つは開催国スペインのコホート研究COSMOSでした。J-DAVIDの順番は最後です。座長はMIA症候群で有名なスエーデンのPeter Stenvinkel先生とウイーンのDontscho Kerjaschki先生でした。Stenvinkel先生には「最後に発表するので」とご挨拶をし、Kerjaschki先生は初対面でしたので自己紹介をしました。かぶりつきの発表者席にはイタリアのZoccali先生の一団が陣取っておられましたので、ニコニコ握手しておきました。Zoccali先生のグループからは透析患者さんの運動療法で入院が減らせるという主旨のRCTを発表することになっていました。
 J-DAVIDのキースライドは19枚目。Primary outcomeのカプランマイヤーカーブをアニメーションでゆっくり示しました。予想の逆向きの結果でハザード比は1.25、ただしP=0.127で有意ではなかったという結果を述べました。このITT解析に対して、補足的なPer-protocol解析ではハザード比は1.32でP=0.09、更に多変量で調整するとP=0.085になりました。「二次性副甲状腺機能亢進症を伴わない維持血液透析患者では内服アルファカルシドール治療による心血管リスク低下は認められなかった。しかし、本研究は二次性副甲状腺機能亢進症を有する透析患者におけるVDRA治療の意義を否定するものではない。」これが結論のスライドでした。
 フロアからいくつか質問がありました。Q1)骨折はどうなった?(質問が聞き取れず、Stenvinkel先生の言葉でやっと質問の意味がわかった)A1)重篤な有害事象(SAE)として調査したデータでは介入群で骨折の報告は少ない傾向があったが、検定はしていない。Q2)阪大濱野高行先生から:コホート研究ではCVD死亡ではなく、感染症死、悪性腫瘍死がVDRA治療群で少ないと報告したが、J-DAVIDでは感染症や悪性腫瘍はどうなったか?A2)これらもSAEとして入院数でカウントしているが、両群でほぼ差はなかった。
 LBCTセッションが終わった会場で、知らない外人が自己紹介してきて、「2004年のNDTに世界で初めてコホート研究を発表したのはShojiだ、いつも引用している。RCTで報告したのもShojiだ、会えて直接話せて光栄だ」と隠れファンがいるのに驚きました。濱野先生とも解析方法などでディスカッションし、「今回のEDTAで最も衝撃を受けたのはJ-DAVIDでした」ともいってもらいました。深川雅史先生からは「Christoph Wannerが褒めてたよ」とのお声もいただきました。
 6月16日(金)の横浜は、梅雨なのに雨もなく快適な気候でした。JSDTでのJ-DAVIDの発表は一般演題O-0068。決して広くない第11会場には聴衆は入りきれない状況でした。マドリードで使ったスライドを日本語にして、ポイントだけを説明したら、ぴったり7分で発表できました。Medical Tribuneやm3.comが取材に来てくれました。
 さて、どうしてJ-DAVIDではコホート研究とは一見逆の結果がでたのか?様々な可能性があります。アルファカルシドール群で初期にCa値が上昇しPTH値が低下したこと。GLを遵守しながら割付治療を継続しようとすために、他の処方が大きく変動していたこと。その結果、実際に行われた治療に無視できないcontaminationが生じていること・・・。何よりも重要なのは、ランダマイズして生み出した二つの集団はそっくりではあるが、集団内は不均一であり、活性型ビタミンD治療でbenefitを受ける人、harmを受ける人、neutralな反応を示す人が混在しているとうことです。その集団にbenefitを受ける人の割合が多いとRCTはpositiveにでるし、逆にharmを受ける人の割合が多いと裏目に出ることになる、そういうことではないかと思います。PTHが高いためにVDRAを使用しているReal worldのコホート研究ではbenefitを受ける患者が多く、逆にJ-DAVIDで選択したPTHの高くない血液透析患者にはharmを受ける患者が多かった?今後はこのあたりを検討する必要がありそうです。適格基準を設定した時点で結果は決まっていたかもしれません。でも最後までやり遂げないと結果は教えてもらえない…。
 この10年間で多くのことを学びました。参加いただいた患者さん、J-DAVID研究会の先生方、そして応援いただきました全ての方に、心よりお礼を申し上げます。結果を必ず論文化し、最後のJ-DAVID Newsでご報告いたします。