腎と骨:その心はビタミンD

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重 松 隆
(和歌山県立医科大学 腎臓内科・血液浄化センター)


医学生の時それなりに学んだと思うが、なかなか成績が上がらず苦手意識の強い科目が二つあり、今思えば腎臓内科と整形外科であった。腎臓内科は、疾患名が 混乱し苦手であった。整形外科は骨の名前の暗記が辛く力学的数式に眠くなり苦手であった。そうした人間が腎臓内科医になり、大学教官として学生を指導し骨 領域を好んでいるのは不思議である。
この不思議が成り立つには、優れた幾人かの教師である恩師の先生方との出会いが有る。その過程で、いくつか の記憶に残る言葉を得た。「腎臓内科こそ全身見るんだよ」などもその一つである。その中に「腎と骨:その心はビタミンD」があった。その流れの中で、ビタ ミンDはコレステロールから皮膚で作られる。肝臓で代謝され腎臓で活性化されホルモンとなるなどを教わった。陸に上がってこそ皮膚はより多くの紫外線を浴 びる事が可能となったのだ。しかし、もっとも印象的であったのは、生命が海で誕生し、陸に上がるときに4つの臓器:腎臓・骨・肺・副甲状腺が必要になっ た。という事であった。
この4つの臓器は比較的新しく、また必要に迫られて生じた臓器なのでスペアとして2つ以上出来たとも考えられる。このう ち、肺と腎は酸塩基平衡で共同作業を行っている。そして腎と骨は、骨を作るホルモンである活性型ビタミンDは腎臓で活性化され、骨とともに出来た骨髄にお ける赤血球造血を刺激するエリスロポエチンは腎臓で作られている。このように我々の不完全な知識では、腎臓が一方的に骨に働きかけていたと考えていたが、 骨から出来るFGF23という因子が見つかり、腎臓におけるリン利尿を促進する事が判ってきた。また素晴らしい事に、骨が出来すぎることを抑制する為に FGF23は腎臓でのビタミンD活性化を抑制しているらしい事も判ってきた。最後のプレイヤーである副甲状腺と腎臓との関係は、リン利尿・酸塩基平衡以外 にクロトーという腎臓でできるらしい因子も加わり、一層の密接な関係を我々は理解し始めている。
こうした世界に私に見せ、私を捕えてしまったものこそビタミンDである。新しいホルモン・未だ未完成のホルモン・ビタミンでないビタミン、このビタミンDに関する知識を広げてくれる研究の進展を願ってやまない。その研究の縁にでも参加していたいものである。