研修医時代から現在までの臨床を振り返って ―ビタミンDとの新たな出会い―

ogawa_tetsuya_l

 

 

 

小川 哲也
(東京女子医科大学東医療センター)


もともと私は、循環器内科医として研修していました。研修医時代、腎臓内科にローテーションし、学生時代に最も苦手だった腎臓にその機能の奥深さと多様性、特に水分調整系の精密さに魅了され、それをきっかけに腎臓内科に方向転換しました。その時以来、全身と腎臓の両方の血行動態に興味を持ち、常に心臓と腎臓の両視点から臨床を診てきました。また、心機能および全身の血行動態と腎臓の機能が互いに大きな影響を受けていることに興味を持ちました。透析という大きな武器を用いて血行動態を能動的に正常に戻すことで全身の状態を観察できることに、日々ワクワクしながら臨床をしていました。さらに、血管の反応性と腎微小循環に興味を持ち、島根医大第四内科の高畠教授の元に国内留学をさせて頂き、ラットのマイクロパンクチャー法を学びながら全身の血圧と腎臓の微小循環にのめり込みました。レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系に作用する降圧剤が新薬として使用できるようになり、これで腎不全治療と心血管障害の大部分が制圧できると夢見ながら、臨床に励んでいました。実際には、当然のことながら血行動態の改善は非常に大切ではありますが、これだけでは腎不全悪化および心血管疾患を完全に抑制が出来ません。特に研究を進めると腎機能が悪くなることが心血管疾患の最も重要な増悪因子であると感じました。その頃、慢性腎臓病の概念が導入され、心腎連関も言われだしました。腎機能が悪いと何故、心臓が悪くなるのか?水、ナトリウム調整系以外の腎臓の機能、すなわち、腎臓のホルモン臓器としての作用を再検討することにしました。その頃、透析患者の大動脈弓部の血管石灰化にも注目し、全身の動脈硬化の評価の一つとして研究をしていました。ある日、結果をまとめていると、大動脈弓部の石灰化の進行抑制の薬剤としてビタミンDが抽出されました。その頃の私は、ビタミンDは石灰化を促進するという知識しかなく、統計処理の間違いではないかと何度もやり直した記憶があります。ビタミンDの総説および庄司先生の論文を拝読し、恥ずかしながら初めてビタミンDが透析患者の心機能保護に働くことを知りました。そのおかげで、自分のビタミンDの石灰化抑制結果に納得し報告することができました。J-DAVID試験は、私にとっては腎臓が心血管保護作用を有する臓器であることを認識させてくれた原点となるビタミンDの臨床試験であり、本当に結果を楽しみにしています。