ビタミンD と心血管病

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室原 豊明
(名古屋大学大学院 循環器内科学)


ビタミンD補充による心臓血管疾患の予防効果については以前から興味を持っていた。実は以前アメリカ心臓協会(AHA)の年次集会で、ビタミンDと心血管疾患に関する話題が、プレナリーセッションの一つとして開催された。そのセッションタイトルは「Vitamin D: Deity or Disappointment?(ビタミンD は女神かそれとも失望か?)」であった。たまたまこのセッションを取材する機会があったので、その時の感想を述べたい。
このセッションタイトル通り、循環器領域においてはビタミンDの補充により、心血管イベントが抑制されたという報告がある一方で、効果が確認されなかったという報告もあり、未だに一定の見解が得られていない。ビタミンD研究の難しさは、投与量が一定量を超えてしまうと中毒量となりかえって悪い作用が出てしまうこと。投与量以外に生体内で活性化される機構にも影響されるため、被験者の日照量、日内戸外活動量、運動量、地球上のどれくらいの緯度の場所に住んでいるか、1年間のどの時期(季節)になされた研究であるかなどにも微妙に影響を受けること、にある。興味深かったのは、アメリカ人の男性の40%、女性の50%程度は、程度の差こそあれ「ビタミンD欠乏状態」であるという。これほどの人口がビタミンD欠乏に晒されているとなると、どのような人で測定をすべきか、ということになる。日本ではもちろん、腎機能低下の患者さん以外で、ビタミンDの血中濃度がルーチンに測定されているとは思えない。セッションの中で、ある教授はビタミンD欠乏症のスクリーニングは、(1)どのような形であれ心血管病をすでに有している患者、(2)高齢者、(3)皮膚に色素病のある患者、(4)高緯度に住む人たち、などでは、一度はビタミンDの測定をすべきであると発言されていた。
循環器の学会で、そのプレナリーセッションの1つにビタミンDのセッションが取り上げられるなど、日本の学会では考えられない。今後この方面の研究が、J-DAVID試験をはじめ日本でも活性化される事を期待したい。