好み/バッチリ/ストライク

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 角 田 隆 俊
(東海大学医学部腎内分泌代謝内科)


  研修医の時見学した腎移植手術時の「腎臓が働き出す場面(シーン)」に魅せられて腎不全医療と関わりを持ちました。しかし、自分の周りで移植の恩恵にあずかるものは、わずかでありました。透析導入、シャントトラブル、激しい掻痒感、手根管症候群そして二次性副甲状腺機能亢進症(SHPT)等の長期透析合併症患者が私の患者のほとんどでした。そんな中、胸郭変形、全身骨痛、呼吸困難に悩むSHPT患者がParathyroidectomy: PTxで劇的に改善する事件が起こったのです。移植手術を超える衝撃を受けました。身近の患者を自分の手で改善できる可能性に喜びと興味を覚えたのです。たくさんの活性型ビタミンD 製剤を週2回内服するという経口パルス療法も知りました。当時静注カルシトリオールであるカルシジェックス®は既に欧米で臨床応用されていたにもかかわらず日本ではいろいろな理由があり使用できず苦肉の策として日本人が編み出した技だということも知りました。日本の医療者の想いを、そこに感じます。PTxに関しては、外科医に頼んでもこの手術に対する考え方や適応に対する意見が違うことから久保田光博先生の甲状腺、副甲状腺の手術に、全例参加し教えていただきました。そんなとき、透析クリニックで、嗄声の患者に会いどうしたのかと尋ねると公立昭和病院の貴田岡正史先生に副甲状腺のエタノール注入をしていただいたとのことです。早速、貴田岡先生にPEITを指導していただきました。一番のコツはエタノールの量とPEIT後の活性型ビタミンD3のパルス療法でした。マキサカルシトールとの併用でPTxに至る過程を伸ばし、症例によりPTxを回避できることもありました。現在は、シナカルセト塩酸塩も加わり治療のバリエーションはさらに深まっています。

  こうして腎不全合併症と自分の関わりを振り返るといつもそこにはビタミンDが存在します。ビタミンDが使用可能な薬剤から使用したい薬剤へと変遷してきたことは、自分の肌感覚でわかります。しかし未だビタミンDを腎不全患者の治療の大前提として「使用しなければならない薬剤」という確証が自分の中にはありません。SHPTの治療の過程では異所性石灰化ともつながり使い方によれば、生命予後にマイナスの面も出てきます。本J-DAVID試験でビタミンDと透析患者の正しい関係が明らかにされ生命予後に好影響が出れば、私にとっての幼なじみのビタミンDが「好み/バッチリ/ストライク」な相手になるだろうと予感します。庄司先生にすっきりさせていただくことを楽しみにしています。