恩師森井浩世先生、ビタミンD、そしてJ-DAVID試験

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前 川 きよし
(藤井寺白鷺クリニック)


私の大阪市立大学第二内科入局当時の主任教授はビタミンDの大家、故森井浩世先生である。私が大学にいたのは5年間だけだったが、森井先生の病棟回診にはほぼ毎回ついてご指導いただいた。先輩の偉い先生たちは参加せず、大学院生で「実質病棟医長」であった私が、研修医を引き連れてお供していた。森井先生は口癖のように「カルシウムはどうですか」(この患者の血清カルシウム濃度は?の意)、「ディーはどうですか」(この患者に活性型ビタミンD製剤を投与しているか?の意)と言われたので、研修医にカルシウムやリンをきちんと測定すること、必要な患者には必要な量の活性型ビタミンD製剤を投与するよう指導することが私の役割であった。当時の私は糖尿病グループだったのでビタミンDとのかかわりはこの程度であったが、大学院を卒業して白鷺病院に赴任することになり、以後約20年にわたり透析の世界にどっぷりとつかっている。
この20年間のCKD-MBD治療の発展は目を見張るものがあり、多くのエビデンスも出てきたが、J-DAVID試験は本邦発のエビデンスであり、その意義は大きい。
現時点では私は本試験の一次エンドポイントはネガティブと予想している。私は白鷺病院で通院透析患者のコホートを立てて観察研究を行ってきたが、どの年代のコホートでどのように解析してもビタミンD投与の有無で予後の差が検出できなかったからである。われわれは本試験開始当初は他の多くの施設と同様に、透析液のカルシウム濃度3.0 mEq/L、リン吸着薬は炭酸カルシウム中心という条件で治療してきたので、ビタミンD投与のメリットをカルシウム・リン積上昇による異所性石灰化が相殺してしまったのではないかと考えている。しかし、もしかりに一次エンドポイントが有意に出なかったとしても、半年ごとの検査データと投薬状況が把握され、予後もきっちりと記録されているデータベースは宝の山であり、多くの本邦発のエビデンスを提供してくれるものと期待しており、結果の公表を楽しみにしている。