臨牀研究に参加する意義

iseki_kunitoshi_l

 

 

 

井関  邦敏
(琉球大学医学部附属病院血液浄化療法部)


現在、進行中のJ-DAVID研究はわが国でしかできない臨床研究である。欧米では透析患者の年間死亡率が10%以上でありビタミンDの効果よりも他の予後関連危険因子の関与が大きいので検証不可能と考えられる。静注ビタミンD製剤間で生命予後を比較した成績が示されている(N Engl J Med 349:446-456, 2003)が、ビタミンD投与と心血管障害の発症率、生命予後に及ぼす効果についてはいまだ不明である。
前向き介入研究と観察研究よりもたらされるエビデンスは臨床家にとっては必須の武器である。米国では多くの前向き介入研究が実施され、それらの結果が過大に評価されている。しかし透析患者の生命予後はわが国に比し不良である。可能性として、1)臨床的に有効とされる薬物が適応や患者の病態を考慮せずに用いられている、2)前向き介入研究ができない事項による生命予後への影響が大きい、3)エビデンスにそった治療以外が無視されている(観察研究や経験による専門家の意見が通らない)、などが考えられる。
最近、EDTAを中心に観察研究の価値を見直す動きがでている。RCTには膨大な費用を要し、そもそも倫理的に実施不可能な題目が多い。CKDステージ5の患者を対象に透析療法の効果を証明するRCT(透析療法導入群と非導入群をランダム化し、前向きに生命予後を比較)はできない。世界第2位の透析大国であるわが国には日本透析医学会統計調査委員会の調査データが存在する。これまでの現況報告に加えて、より詳細な観察研究を2008年度より開始している。すでに公募・委員会研究として20件の課題が登録されている。ビタミンD、脂質代謝と生命予後、心血管障害発症に関する課題を庄司先生が担当されている。
J-DAVIDの症例登録、データ収集には多くの人手が必要である。我々も沖縄県下において約40の透析施設の協力を得て高血圧を伴う慢性血液透析患者(469例)を対象にARB使用群と非使用群の生命予後、心血管イベント発症に関する前向き介入研究を実施している(2011年6月終了予定)。予想外の問題が次々に発生している。協力施設の医師、看護師、スタッフの皆さまの献身的尽力(金銭的インセンティブがない)によって支えられているのが現状である。腎臓病領域は最もRCTが少ない領域であるが、医療者の発想による医師主導型研究は日本でこそ発展する素地があると思われる。