血管石灰化と私

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伊苅  裕二
(東海大学医学部循環器内科)


私は、1996年から3年間アメリカのワシントン州立大学へ留学し、Schwartz教授のもと血管の病理について学んだ。主たる研究は動脈硬化の発生であった。動脈硬化はその病理学的変化の中心は血管の内膜であり、血管の内膜がない内胸動脈などには発生しない。また人間以外の動物には内膜がほとんどなく、動脈硬化から心筋梗塞で死亡する動物はいない。人間において内膜は出生前から発生し、その最初に認められるのは冠動脈、頸動脈、動脈管の3か所である。動脈管は生後直ちに閉塞する血管であり内膜が出生前に発生するのは理解可能であるが、心筋梗塞や脳梗塞の原因である冠動脈や頸動脈になぜわざわざ出生前からできてしまうのであろうか?現在も答えが出ていない大きな謎である。
日本では心筋梗塞の死亡は癌よりも少ないが、このような国は世界中探してもフランスくらいしかない。通常の国では癌の3倍くらい多い。世界保健機構の統計をみても世界中の人類の死亡率の第一位は心筋梗塞である。そのあとに感染症や下痢性の疾患、呼吸器疾患などが続く。動脈硬化は人類最大の弱点であると言ってよい。
さて、病理学は19世紀のVirchowが発展させて領域である。Virchowはすでに動脈硬化を観察し、血栓、脂質、石灰化を認めると報告されている。血栓に対する薬は、抗血小板薬で現在世界の売上の第一位を争う薬である。また脂質を低下させるスタチンも第一位を争っている薬である。ところが、血管石灰化に関しては20世紀に全く学問の進展がなかった。私は21世紀に最も発展する領域であると信じている。
今回J-DAVIDという重要な臨床試験に関わる機会をいただき、大変幸運である。活性型ビタミンD使用が石灰化抑制に作用するとの観察研究もあり、J-DAVIDの結果に期待を寄せている。