古くて新しいもの・・・その心は「ビタミンD」

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橋本 哲也
(桃仁会病院)


ずいぶん昔の話となるが透析医療に出会った時、初めて覚えた腎不全関連の薬剤がアルファロールとチオデロンで、エポエチンβが世に出る数年前のことであった。それまで泌尿器外科を研修し「術後にHt値が30%を割り込めば輸血をすること」と先輩医師から教えられていた私にとって、「Ht値が20%は当たり前」という腎性貧血の世界は驚きとある意味新鮮な世界でもあった。その時に、チオデロンは腎性貧血に対する唯一の治療薬と教えられたが「ホンマに効いてるんかいな?」という印象しか持てず、その数年後にエポジンが世に出てチオデロンは忘れ去られた存在となった(実際、この文章を書こうとしたとき暫くチオデロンという薬剤名が思い出せなかった)。
一方、アルファカルシドールはSHPTの万能薬にはなり得なかったが、CKD-MBDの治療薬として現在も身近な存在である。しかし、OCTやシナカルセトの登場もあり、私にとって特別な薬剤ではなくone of allとしての存在となっていた。
さて、臨床の現場で透析医療に従事する自分にとっての最大の目標は、透析患者が健常人と同等の生命予後ならびに生活の質を獲得することである。そして、そのことを目標にSHPTやCVD、PADなどの合併症対策を含む日々の診療に携わってきたつもりではあるが、生命予後一つをとってみても健常人の半分程度しかない現実とのギャップが横たわっているのが現状である。
しかし、1997年にトランスジェニックマウスとしてKlotho変異マウスが作成されKlotho蛋白が抗老化ホルモンであると考えられるようになり、透析患者におけるKlotho蛋白の減少やFGF23の増加は老化や血管石灰化を介して生命予後を悪化させるという一大パラダイムシフトがおころうとしている。そして、ビタミンDのKlotho蛋白増加作用はCKD患者の腎保護作用のみならず、「ビタミンDは長寿ホルモンになりうる」という仮説を後押しするものであり、透析患者の長寿を願う自分の中で再びビタミンDがone of allから、少し大げさではあるがonly oneとしての輝きを取り戻しつつある。
勿論、単純にビタミンDを投与すれば良いという類いのものでないことは当然のことであるが、J-DAVID試験はその一端を解き明かそうとするとても魅力的な夢のある臨床研究であり、その研究に参加させていただけたことに深謝するとともに、本試験で大きな成果が生み出されることを願ってやまない。