重症冠動脈疾患を合併した透析患者への思い

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長 谷 弘 記
(東邦大学医療センター大橋病院腎臓内科)


現在、冠動脈疾患(CAD)を合併したCKD患者に対する経皮的冠動脈インターベンション治療(PCI)は一般的であり、再狭窄率も5%前後に過ぎません。また、CKDがCADの最も強力なリスク因子であることは当然のこととして理解されていることも事実です。しかし、透析患者のCADがCKD保存期に既に完成していることを、Nephrol Dial Transplantに投稿した1996年当時では考えられなかったことです。東邦大学医療センター大橋病院ではPCIを開始した1985年当初から、透析患者にも積極的に応用してきました。しかし、そのほとんどが再狭窄という壁に突き当り、1990年頃には透析患者をPCIの適応外とする風潮が全世界に蔓延しました。これを打破したのが1991年に当時の東邦大学第三内科主任教授に着任した山口徹先生(現、虎の門病院長)でした。心臓外科医に見放された透析患者が全国から集まってくるという結果になったものの、PCIと再狭窄の繰返しが何年も続いたことには変わりはありません。また、当時最も苦労したのは高度の石灰化を伴った重症CADでした。バルーンでは全く病変は拡張せず、PCIを断念せざるを得ない透析患者の頻度も決して少なくはありませんでした。この様な状態はステントとrotational atherectomyが登場した1990年代末まで続いたのです。
つい先日、第1回J-DAVIDイベント評価委員会が開催されました。既に、研究会に登録された症例にイベント発症が認められていると伺いました。J-DAVIDで使用されている薬剤であるalfacarcidolが発売されたのは30年前、発売からしばらくの間はRODの予防/治療薬として、私も多くのCKD患者に投与していました。しかし、PCI困難な高度石灰化を伴うCADに遭遇する機会が増え、血中Ca濃度の上昇が石灰化促進因子である可能性が取り沙汰されるようになったのを契機に、CKD患者への投与を控えるようになりました。そのような折りに、J-DAVIDを企画された先生方の「alfacarcidol投与が心血管イベント発症を抑制する」との論文は非常に驚きでした。
昨今、非常に多くの観察研究において同様の結果が報告されるに至っています。現時点では透析期CKD患者の心血管イベンを抑制する薬剤はcarvedilolのみであり、2次予防/生命予後改善の面からはPCI/CABGとnicorandilも有効な治療法として確立しているに過ぎません。Alfacarcidol投与が心血管イベントを抑制するのみならず、より多彩な効果によって非心血管イベントをも抑制することが実証されることは、CKD患者のCADと戦い続けてきた私にとって非常に期待するところであると共に、CKD治療戦略の新たな幕開けにもなることでしょう。