ビタミンD への期待

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本 田 浩 一
(昭和大学江東豊洲病院)


 魚類のCa調節系は、鰓を介した環境水からのCa摂取と過剰なCa蓄積を防ぐための腎による排泄で維持されている。骨におけるCaの貯蔵は、カルシトニンによるCa骨貯蔵能を有してはいるが、骨自体は支持器官としてのみ機能し、副甲状腺ホルモン(PTH)によるCa・Pの恒常性維持と骨代謝の調節系は存在しない。ビタミンDは魚類にも認められるが、ビタミンD活性化の調節系やその生理作用は陸生動物とは異なると推測される。
 脊椎動物が水生から陸生に移行すると、生体維持のために骨による骨格を構築し、陸生環境に適合したCa・Pの恒常性維持が要求され、骨のCa・P貯蔵、Ca・Pの消化管摂取などの機能を獲得した。この進化の過程でPTHが創造され、ビタミンDを含む各々の調節系が発達し、複雑にクロストークをしながらCa・P恒常性を維持する生態へと発展した。この調節系で興味深いことは、老化抑制因子klothoがfibroblast growth factor 23とともに腎尿細管でのCa・P調節に密接に関係し、ビタミンD活性化の調節にも関与することである。
 さらにビタミンDの作用はCKD-MBDに関する作用以外に、筋肉代謝亢進、抗動脈硬化、抗炎症・酸化ストレスや免疫システムなどに関係する。つまり、ビタミンDは陸生脊椎動物の進化の過程で個体の生命予後に直結する必須の因子として発展したわけである。
 一方、透析患者は前述の腎での調節系が破綻して活性型ビタミンDは枯渇し、尿毒素が蓄積した生態環境下におかれている。現在、透析患者のビタミンD療法は、CKD-MBD治療の枠組みの中で実施されている。J-DAVID試験は透析患者の生命予後に対するビタミンD療法の意義を検証する目的で立案された臨床試験である。透析患者における補充療法としてのビタミンD療法はCKD-MBD領域を超えるのか、この疑問に答える成果を期待したい。