ビタミンDに魅せられて

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田 原 英 樹
(大阪市立大学大学院医学研究科 代謝内分泌病態内科学)


ビタミンDの研究をはじめて、ちょうど四半世紀がたちました。大学院へ入り、故森井浩世先生からビタミンDを用いた研究をするように仰せつかり、長いビタミンDとの付き合いが始まりました。当時は昭和大学の阿部悦子先生が「ビタミンDの細胞分化誘導作用」を世界ではじめて報告され、元来抗くる病・骨粗鬆症治療剤として認識されていたものが、これを境に多面的作用を有するホルモンであるという認識が広がっていった時期でした。私もご多分にもれず、細胞の増殖や分化に対する作用を研究するようになりました。実際に自分で研究をしてみると、単にビタミンの一種としてしか考えていなかったものが、細胞の増殖・分化に作用し、免疫系に影響を与えるという結果を得て、この物質に対して虜になったことが今でも鮮明に記憶されます。
当教室では、いろいろと国際学会を開催させていただく機会が多々あり、そのたびに、この分野で有名な先生方を日本へお呼びすることがありました。そのため、医局員がお呼びした先生方の観光案内することがあったのですが、私もお声がかかりビタミンDを精製されたDr Hector F Delucaのお供をする機会が与えられました。その中で、ビタミンD研究の楽しさをお聞きすることができ、より一層ビタミンDの魅力に惹かれたことを覚えております。また、丁度留学も重なり、紙面に書ききれないほどのビタミンDやPTHを専門とする有名人達の中で研究生活を送り、ビタミンD研究の素晴らしさを体験することができました。
年々ビタミンDに関する論文が増えてきているようですが、まだまだ判らないことが多く、その機序解明に夢をふくらませるのですが、特に体中に存在する、ビタミンD受容体(VDR)や1α水酸化酵素を介した多面的作用が、本当にどれほどの力を持っているのか興味は尽きません。実際に臨床の現場では、高くなったPTHを抑えるために使用される静注ビタミンDパルス療法のすばらしい切れ味を体感しますが、経口薬のビタミンDの投与が維持透析患者さんたちの予後を改善するかは、まだまだ自信なく迷うのが現状かと思われます。