Chicken or Eggの呪縛

kawanishi_hideki_l

 

 

 

川 西 秀 樹
(土谷総合病院)


1983年に公表されたNational Cooperative Dialysis Study (NCDS, KI 1983)以降、透析量指標としてurea kinetics modeling が広く用いられるようになり、PCRとKt/Vの相関性が論じられてきた。PCRが高い人は栄養状態がよく、そのため透析量(Kt/V)を多く得ることが 出来ているとの考えと、他方はKt/Vを上昇させれば尿毒症症状が低下し食欲が亢進しPCRが上昇するであり、どちらが先か、つまりKt/V or PCR – chicken or egg (Lindsay RM. KI 1992)と揶揄された。この疑問はその後も検討され前向き介入試験としてHEMO-study (NEJM 2002)が行われたが、これでもKt/V増加の有意性が確認できなかった。
このchicken or eggは多くの臨床研究が陥る問題である。活性型ビタミンDに関する研究においても、ある研究ではビタミンD投与と低い死亡リスクと関係があると報告され ているが、逆にビタミンDを投与することができる患者は全身状態がよく死亡率が低いのではとも疑われる。これは観察研究の限界であり、前向き比較試験が必 要な所以である。しかし前向き試験においても選択バイアスを完全に排除することは困難であり、幾つかの試験では未だ疑問が残る。そのため、われわれは日頃 から臨床論文を読む際には、常にchicken or eggの問題を念頭に置く必要がある。
ちなみに最初に述べたKt/VとPCRの関係は、 その後連日透析や長時間透析が行われるようになり、それらの患者ではKt/Vは上昇しPCRが上昇し栄養状態が改善するとの結果より透析量増加の必要性が 証明された。しかしそれは連日あるいは長時間透析によるものであり、週3回4時間の透析では未だ明確な解答は得られていない。
J-DAVID試験は前向き観察研究としてよくデザインされており、活性型ビタミンD投与の予後へ与える効果が明確にされるであろう。この結果より活性型ビタミンDと生存率に関するchicken or eggの呪縛が解消されることを期待する。