目の前の不思議から始まる臨床研究: 予想外がおもしろい

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深 川 雅 史
(東海大学腎内分泌代謝内科)


学生や研修医の指導をしていると,毎週のように気づくことがある.彼らは結構よく勉強しているが,その多くは1対1対応型の知識であり,鑑別診断も教科書の表の上から順番にやってくる.こういうタイプは,重要な問題点を見逃したり,的外れな検査をたくさんしがちである.もう一つのタイプとして,経験が中途半端な後期研修医に多いのだが,やたらエビデンスの知識があるが実用的でなく,それがない状況では,逆に何も出来ない.これらの人たちに共通しているのは,目の前の患者さんをみて,病態を考え,不思議と感じる姿勢の欠如である.
研究の方をみても,同じように極端な姿勢の人たちがたくさんいる.時代の先端を行く遺伝子発現の網羅的解析や,統計的手法を駆使した臨床研究でもよく感じるが,この人たちはその結果をみて初めて「仮説」を考えるのであろうか?たしかに,このようなアプローチで全く新しいことが偶然見つかることはあると思うが,忙しい臨床医がそのような姿勢で研究を進めることは基本的にむずかしいとおもわれる.
それでは,われわれ臨床医は,どのように臨床研究に貢献できるのであろうか?その最初の一歩は,やはり目の前の患者さんをよく診ることであろう.よく診るというのは,病態を理解しようとすることから始まるが,必ずしも一つの病態では説明出来ないことに気づくことで,さらに深まるものである.これらをもとに,小規模の臨床研究を行うことも出来る.
もう最先端の手法について行くことが出来なくなりつつある自分ではあるが,これまでこのような姿勢で,ミネラル代謝に関係するいくつかの新しい病態を解明することができたのはラッキーだったと思う.その中でもう一つ感じたことがある.逆説的ではあるが,実験でも,臨床でも,「予想外」の結果が出たほうが面白いことが隠れていることも多いということだ.
これからの若い人たちにも,目の前の不思議を見逃さないで,予想外の場合は,よく考えて,そこから発展して,このJ-DAVIDのようなきちんとした臨床研究につながることを期待したい.