悪性腫瘍とCKD-MBD

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伊 藤 千 春
(自治医科大学   腎臓内科 )


自治医科大学附属病院では,ここ数年で年間130人程度の症例が新規に透析導入され,高齢者の割合も多い為か,透析導入時に担癌患者を目にすることも少なくはなかった。中には末期癌の方もおり,当該科主治医と共に透析導入後のケアについて慎重に配慮していくことも透析業務の一つとなっている。悪性腫瘍を抱えつつ,さらに心血管系疾患や感染症で,透析導入から何度となく入退院を繰り返す症例も増えていると思われる。その負担を考えると,自身で同じような境遇に陥った場合,どのような心境になるのかは想像もできない。
悪性腫瘍とCKDの因果関係については,本邦では最近の詳しいデータがなく,2008年初めから2013年末までの自治医科大学附属病院での透析導入患者の悪性腫瘍合併について調べることとした。結果はClinical Experimental NephrologyのLetter to Editorに掲載させていただき,透析導入患者の既往と透析導入時に,悪性腫瘍の中でも胃癌を上回り,大腸癌の診断症例が共に一番多いという結果であった。CKD全体ではないことや,単施設の結果であるので正直に言えば心もとなく,多施設で集計し,症例数が多くなった場合にどうなるかが問題ではあるが,何らかの要因が関係しているのは確かだろうとは思う。
何故大腸癌が多いのか調べてみると,賛否両論はあるが,最近の複数の疫学調査では25(OH) D3不足は大腸癌のリスク因子となり,また,台湾の報告において,非透析CKD症例では大腸癌の危険度が高いという結果も出ている(Ann Surg Oncol 20:3885-91, 2013)。ビタミンDのCa,P代謝以外の多面的作用については十分解明されていないものもあるが,病因の一つとして,大腸癌細胞のビタミンD受容体遺伝子変異の解析についても活発に行われている。
日常臨床では,CKD症例でのビタミンD不足を容易には実感できないので,そこに更に別軸を置くことには若干の違和感を禁じ得ないのだが,CKD-ビタミンD-大腸癌を結びつけるコホート研究はこれまでないことから,他力本願ではあるものの,今後の検討結果が待たれる。また,J-DAVID研究では維持血液透析患者の心血管イベント,生命予後がエンドポイントだが,今後新たな研究で,対象を保存期CKDとし,エンドポイントとして他の疾患についても拡張できれば,興味深いかもしれない。