私とビタミンDとの関わり

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安 藤 亮 一
(武蔵野赤十字病院 腎臓内科)


1984年当時、これから腎臓や透析の勉強をやっていこうと思っていた新米の腎臓内科医であった私にとって、衝撃的だった論文のひとつが、Slatopolsky先生ら*の静注ビタミンDによる二次性副甲状腺機能亢進症の治療の論文である。この分野で新たな局面を切り開く臨床研究であったといえる。私の恩師であり、医学が真実を探求するサイエンスであることを教えてくれた佐々木成先生(現:東京医科歯科大学腎臓内科学教授)は、腎生理が専門でこの分野では専門外であったが、この論文が出た当初、その後のビタミンD研究の大いなる発展と臨床的有用性を直感し、私に助言いただいたことを思い出す。私自身はその当時は未熟で、すぐに臨床や研究に生かすことは思いつかなかったが、佐々木先生の予想どおり、その後のビタミンDの研究が、副甲状腺との関連を中心にすすみ、臨床的にも二次性副甲状腺機能亢進の治療の中核となった。その後、私自身もビタミンDの二次性副甲状腺機能亢進症の治療薬としての有用性を実感し、そのことを検証する臨床研究に、ほんの一部ではあるが、関わってきた。
しかし、中等度から高度の二次性副甲状腺機能亢進症にビタミンD治療を続けることにより、カルシウム・リン積が増加し、結果的には、異所性石灰化の原因のひとつとなってきたことの反省と、副甲状腺機能を効果的に抑制するカルシミメティクスである、シナカルセトの登場により、二次性副甲状腺機能亢進症治療におけるビタミンDの役割は新しい時代に入ったといえる。
一方、ビタミンDは、免疫強化作用、抗炎症作用、抗酸化作用など様々な多面的作用を有し、観察研究では、透析患者の生命予後を改善することが報告されてはいる。私もビタミンDと生命予後には以前から関心を持っていた。以前在籍した中野総合病院では、私が在籍していた1995年から、年2回定期検査で1,25ビタミンD濃度を測定している。今度の透析医学会では、現在中野総合病院にいる共同演者の先生がそのビタミンD濃度と生命予後との関連を検討し発表する予定である。
では、ビタミンDは本当に透析患者の生命予後を改善するのか、は前向きのランダム研究では検討されていない。大阪市立大学の庄司先生らが計画したJ-DAVID試験は、この命題について正面から検証する、ビタミンDに関する真実を探求する臨床研究である。この研究により少量の経口ビタミンDが透析患者の予後を改善するという仮説を証明できれば、透析医療における新しいビタミンDの時代を切り開く臨床研究といえる。このような素晴らしい目的をもった研究の一端を担えることに誇りと感謝を表したい。
J-DAVID試験は、最後の最後になって、目標症例数972例を達成するとのことで、大阪市立大学の庄司先生をはじめとした関係者の方々のご尽力に敬服するとともに、これからのデータの収集と解析により、ビタミンDに関する臨床的な真実が明らかにされることを期待したい。