代表世話人

inaba

 

 

J-DAVID研究会代表世話人
大阪市立大学大学院医学研究科代謝内分泌病態内科学
稲 葉 雅 章

 


「J-DAVID解析を間近に控えて」

 J-DAVID試験では先生方に非常にお世話になりまして、誠にありがとうございました。本来であればそれぞれの先生方にこちらから出向いて御礼を申し上げるべきところですが、まずはこの場をお借りして御礼申し上げます。本当にありがとうございました。
先生方のお蔭をもちまして、J-DAVID試験での最終登録症例の観察期間が今年の春に終了いたし、本年2016年3月末をめどにデータ固定ができるようにデータセンター・事務局全員で進めている真最中でございます。その後解析に進む予定で、最終結果が出るまでもう少し、時間を頂きたくお願いを申し上げる次第でございます。
 本研究は、教室の庄司哲雄准教授が血液透析患者コホートで、活性型ビタミンD投与群では非心血管死亡率では、非投与群と比べて有意差がないのに対して、心血管死亡率では有意な低下を見つけたことから始まりました。この現象を全世界が観察コホートで確認し、その後に、透析患者の生命予後やQOL, 入院頻度などにも関連していることも明らかとなりました。その機序として、それまでに知られていた活性型ビタミンDの生命予後を改善する可能性を秘めた作用のいくつか、すなわちビタミンDの多面的作用として知られていたRAS阻害作用や免疫調整作用などが改めて注目されることになりました。ただ、現在のEBMを重視した考え方では、活性型ビタミンDのこれら作用を確定するためにはやはり前向きのRandomized Clinical Trialが必要で、計画から実践に至るまで庄司哲雄准教授が彼の研究チームとともに多大な努力の下に行った非常に重要な研究と考えています。現在の臨床試験ではRAS系阻害薬や生命予後に多大な影響を与える投薬についてはコントロールできない状況であり、他の試験同様、有意差が得られない場合も恐々ながらも想定せざるをえません。しかし、そのような状況下でもビタミンD投与群で有意差が出れば、私共臨床医も自信を持って、ビタミンD活性化欠失病態モデルである末期保存期腎不全~透析患者への活性型ビタミンDの少量投与を正当化できる論理的な根拠ができると信じています。
 ご尽力賜りました先生方と同様、私も庄司チームの解析結果をわくわくして待つ一人です。日本からこのような臨床研究が生まれ、正当な手続き、解析手順を踏み、どのような結果であってもそれを世界に発信できるような一連の状況は、いろんな齟齬で信頼感の低下した日本の臨床研究を回復させうる重要な一歩となるものと信じています。
 また、結果につきましてはもう少しお時間の猶予を頂きますことをお詫びするとともに、先生方のご尽力で一定の結果を得る前向きRCTが終了いたしましたこと、代表世話人として心より深謝いたします。本当にありがとうございました。


 

inaba

 

 

J-DAVID研究会代表世話人
大阪市立大学
稲 葉 雅 章

 


先生方にお世話になっていますJ-DAVID研究の最終登録症例は2011年1月であったため、追跡期間4年間のJ-DAVID試験も最終登録症例の追跡満了まで、後1年を残すのみとなりました。全国の先生方のご尽力と、ビタミンDを投与することで透析患者の生命予後やQOLを改善できるのかを本当に知りたいと思われる諸先生方の熱意でここまで進んでこられたと思います。感謝申し上げます。
ビタミンDが臨床の場に登場して以来、CKD-MBDの治療はビタミンDを中心に回ってきました。しかし、シナカルセトやリン吸着薬が相次いで臨床使用できるなって以来、また透析液中のCa濃度の調整なども含めて血清Ca, リンのコントロールがより容易となり、ビタミンDを必ずしも選択せずともCKD-MBDガイドラインを満たせる症例も多くなりました。そのうえで積極的に日本人血液透析患者にビタミンDを投与したほうがよいか否かは、多大な労苦を伴ってもJ-DAVIDのような前向きRCTで証明すべき問題であり、さらにビタミンD製剤でも活性型かnative ビタミンDで良いのかといった問題にも方向性を与える日本発の重要な臨床研究として捉えられると思います。
ビタミンDは血清Ca、リンを上昇させる脂溶性ホルモンとして発見されましたが、その後、生体内で合成されることや、ビタミンD特異的受容体がステロイドホルモン受容体ファミリーに属し、その長さが短いことから、ビタミンDはグルココルチコイドなどより起源の古い、より生命の根源を担っている原始ステロイドホルモンとして考えられています。血液透析患者では腎機能喪失によりビタミンD活性化能を消失している病態モデルとして捉えることができ、その結果として免疫能の低下や栄養状態の低下、筋肉量の減少などビタミンD欠乏で説明できる事象が数多く発現してきます。このヒト病態モデルで活性型ビタミンDの投与効果をRCT試験でさらに様々な観点で評価できるJ-DAVID試験の終了まであと1年です!
いつも「1年間、何もまとまったことができなくてこの1年が早く終わってしまった」と嘆いていますが、J-DAVID試験の結果を早く知りたいと思うと、この2014年度がさらに早く終わってしまうのではないかと心配しています。最後まで先生方とともに症例の追跡に励んで、最終結果を感慨深く感じられるように励んでいきたいと思います。


 

nishizawa

 

 

 

J-DAVID研究会前代表世話人
大阪市立大学
西 沢 良 記


透析医療発展の歴史は、イノベーションの連続でした。透析テクノロジーや薬物療法の発展には目を見張るものがあります。特に、日本は、透析患者さんの生命予後の国際比較において世界一を誇っており、わが国から発信される透析医学研究が、今後も引き続き、世界の透析医療の進歩を牽引していくものと、期待されております。

この流れにおきまして、今また新たな可能性が出てまいりました。それは、活性型ビタミンDの新たな意義です。腎不全ではビタミンDの活性化障害があること、その結果として骨ミネラル代謝に異常をきたすことは以前から知られていたため、活性型ビタミンD製剤はもっぱら骨ミネラル代謝治療に用いられてきました。一方、近年の研究成果により、ビタミンDにはそれ以外の広範な作用があることが認識されるようになり、「ビタミンD生理学」の概念が拡大しております。たとえば、ビタミンDの免疫調整作用、抗炎症作用、抗腫瘍作用は、以前から報告がありました。最近になり、ビタミンDがレニン・アンジオテンシン系を抑制すること、心肥大や心機能を改善しうること、動脈硬化を抑制する可能性などが示され、循環器系にも重要な役割がありそうだと考えられるようになりました。これに対応して、複数の観察的コホート研究により、活性型ビタミンDあるいはそのアナログを使用している腎不全患者さんの群で総死亡率や心血管系死亡のリスクが低いという結果が示されています。

もし活性型ビタミンD製剤が、透析患者さんの心血管系疾患を予防し、健康で長生きすることに本当に役立つならば、新たなイノベーションになるかもしれません。しかし、現時点では、そうとは結論できません。それは、あくまでも観察コホート研究に基づく「仮説」であって、介入試験による裏づけがないからです。活性型ビタミンDを用いた無作為化比較試験(randomized controlled trial, RCT)による実証が求められています。

「日本透析活性型ビタミンD(Japan Dialysis Active Vitamin D)試験」、略してJ-DAVID(ジェイ・デヴィッド)試験は、ビタミンDが「長寿ホルモン」って、本当?という疑問に答えるために計画されたRCTです。その実施のために、北海道から沖縄におよぶたくさんの透析施設と透析患者さんにご参加いただき、目標症例数972例を目指して現在進行形です。この臨床試験の意義にご理解・ご賛同いただき、是非ともご参加いただきますよう、よろしくお願い申し上げます。